
いよいよ盛夏の時期がやってまいりましたね。ここ関西地方では早くも梅雨が明け、すっかり夏本番を感じさせる陽気となりました。皆さまいかがお過ごしでしょうか。
今月のテーマは「土用干し」。「土用」と聞くと夏の「土用の丑の日」が思い浮かびますが、ちょうどその土用の頃に行われる「ものを干す」風習が土用干しです。特に梅干しが代表的で、梅雨明け後の暑い時期に梅の天日干しをして水分を飛ばし、保存性を高めるとともに、梅干し特有のねっとり柔らかい食感を生み出します。
土用干しでは、梅干しのほかに書籍や田んぼも晴天を利用して干しますが、私たちにとって特に馴染み深いのは着物の「虫干し」ではないでしょうか。土用の晴れた空気のもとで陰干しをして湿気を飛ばし、昔から大切な着物をカビや害虫から守ってきました。また、着物をほどいて洗濯し、縫い直す洗い張りもこの時期に行われていたそうです。
クリーニングや便利なツールなどのおかげで衣類の保管状態も良くなり、着物のダメージもさほど大きくはないかもしれません。ですが気密性の高い現代家屋は思っているよりも湿気がこもりやすいもの。この時期は虫干しを行うとともに、日頃の着物のお手入れについて振り返るよい機会かもしれませんね。私の場合は、晴天が続いて乾燥した日などに風通しをよくした室内に着物を干します。同時に、汚れは放置していないか、クリーニングの出し忘れはないか、着用後の汗抜きは念入りに、など、些細なことではありますが日頃の自分の着物のケアをチェックするよいタイミングとなっています。
現代においては、虫干しも日頃のお手入れも時期や回数に固執しすぎず現代の方法に合わせ柔軟に行うのがよいではないかと思います。時に自然の力を借り、人の手をかけいつくしみ、そして何より愛着を持ってたくさん着ることで、着物はきっと長い年月を経てもなお美しく私たちを楽しませてくれるのではないかと思います。

文章:一昌スタッフ・塚本